Appleは6月25日(木)、MacBook、iPad、 Apple TV(4K) 、HomePodなど、幅広い製品の価格を引き上げました。幸いにも今回の値上げにiPhoneやApple Watchは含まれていません。今のところは。
このニュースは、米アマゾンの夏のプライムデーをはじめとする大手小売店のセールが目白押しの週の真っ只中、そして新学期商戦の直前に発表されました。そのため、Apple製品のお買い得品を待ち望んでいたアメリカ人たちは軒並み落胆したことでしょう。
もちろんこの流れは日本にも波及してます。今回はこの「Apple 初夏の大幅値上げ」の背景について解説します。
米Apple アメリカ国内での動向
The Wall Street Journalが 最初に値上げを報じた25日(木)の朝、Appleのオンラインストアが一時的にクローズし、復旧したときにはほとんどの製品価格が引き上げられていた模様です。同紙は、MacBook Air、MacBook Neo、MacBook Pro、iPad Air、iPad Proの基本モデルの価格が上昇したと報じていましたが、よく見たらそれ以外も全部上がっとるやんけ!という状況だったそう。
Appleは各米メディアへの声明の中で、価格の改定を認め、その理由として、AIデータセンターの急速な拡大と、それに伴うメモリとストレージの需要急増を挙げています。
これ程の短期間で大幅に部品価格が上昇したことはない。iPadやMacを含む多くの製品価格を引き上げざるを得ない状況に至っている。消費者への盾になろうと持ちこたえてきたが、これほど急激な部品高騰は過去になく、もう限界だ。
ティム・クックCEO
また、今月中旬、ティムは、同じくThe Wall Street Journalに対して、RAM不足(通称「 RAMageddon ラマゲドン」)による価格上昇は避けられないと語っていました。この発言はこの大規模値上げに際する布石だったんでしょうね。
日本市場での主要製品の価格差
ご多分に漏れず、日本国内でもほぼ全てのApple製品が値上がりしています。日本での販売価格差の内訳は以下の通りです。ここでは主要製品の最小構成を簡単にまとめておきます。
| MacBook Neo | 99,800円 | 119,800円 |
|---|---|---|
| MacBook Air(13インチ) | 184,800円 | 224,800円 |
| MacBook Air(15インチ) | 199,800円 | 278,800円 |
| iPad Air(11インチ) | 98,800円 | 129,800円 |
| HomePod Mini | 14,800円 | 22,800円 |
| HomePod(第2世代) | 44,800円 | 59,800円 |
| Apple Vision Pro(256GB) | 599,800円 | 649,800円 |
| Mac Studio(M3 Ultraベース) | 668,800円 | 899,800円 |
2022年の歴史的な大幅値上げ以降、日本市場では毎年、数千円〜数万円ずつベース価格が引き上げられてきましたが、今回で2度目となった大規模な価格改定に関して言えば、皆さんご存じの通り、1ドル161円台後半まで進んだ歴史的な円安の背景もあり、日本円に換算するだけでも1.4倍程の金額になってしまうという点が大きな要因の一つです。加えて、先述した「RAMageddon ラマゲドン」の影響で結果的にここまでの大幅な値上がりとなってしまっています。
「RAMageddon ラマゲドン」について
英語圏では「アルマゲドン」の「マゲドン(-mageddon)」の部分を引っ張ってきて、「〜による大災厄・世界の終わり」という定番のスラングがあります。「Snowmageddon 大雪による都市の麻痺」とか、「Carmageddon 大規模な交通渋滞」とか言ったりするんですが、今回はRAM不足による世界的災厄、「RAMageddon」と言われてるわけなんですね。
ちなみに製品価格を引き上げているのはAppleだけではありません。Samsung, Microsoft, Metaなどの大手テック企業も、 RAM不足による深刻なチップ不足を理由に、VRヘッドセットやゲームハード、PCなどの価格を軒並み引き上げています。
今日では世界中で生成AI用のデータセンターが猛烈な勢いで建設されています。そのため、AIサーバーに大量に必要となるDRAMやストレージ用半導体の争奪戦が起き、部品コストは僅か1年で数倍までに急騰しました。Counterpoint Researchによると、コンピューターの主要メモリ部品であるDRAMの価格は、今年最初の6週間だけでも80~90%程度上昇しているとのことです。
また、コロナ禍以降の世界的なインフレによる組立工場の人件費や、航空便・船便などの輸送コストの継続的な上昇も要因の一つですが、大きくはAIデータセンターによる製造ラインの占領が原因です。
つまり、SamsungやSK Hynixなどの製造メーカーによるリソースの割り当てが問題となっているわけで、シンプルにAIデータセンター向けのHBM(高性能AI用の超高級RAM)の方がスマホやPCなどの通常のRAMよりも圧倒的に儲かるので、ラインや原材料がそちらに回され、一般向けのRAMが深刻な供給不足に陥っている、という構造的な問題なんですよね。
そこにロシア・ウクライナ戦争の影響でネオンガスの貿易ルートが規制されたり、中東の戦争の影響で物流ルートが途絶えたり、など、戦争や地政的な要素も加わり、RAMageddon 爆誕!というわけです。
iPhone, Apple Watchの今後の見通し
先週の値上げでは、幸いにもiPhoneやApple Watchは対象外でした。しかし、これらは例年9月の新型発表時に価格が改定されています。「RAMageddon」が今秋まで続けば、iPhone18を待たずに、現行モデルの価格がさらに引き上げられる可能性は極めて高いでしょう。
例年通り、まず間違いなく前モデルよりも値上がりはするのですが、(またストレージ構成の変更などでごまかしてくる可能性はある) 個人的に値上げ幅は例年をはるかに超えてくるんじゃないかと思っています。iPhone18無印が150,000円前後、Proシリーズが200,000円、Pro Maxが240,000円、といったところでしょうか。
各メーカーもAppleの動向を基準に考えている節があるので、これからここぞとばかりに値上げ祭りが開催されるでしょう。まさにスマホゲドンの始まりです。

